水道工事を行っている事業者の方から、次のようなご相談を受けることがあります。
「水道工事は、管工事業と水道施設工事業のどちらに該当しますか」
「指定給水装置工事事業者であれば、建設業許可は必要ないのでしょうか」
「道路に埋設する水道管の工事には、どの許可が必要ですか」
一口に「水道工事」といっても、工事を行う場所や設備の種類によって、必要となる建設業許可が異なります。
また、建設業許可と指定給水装置工事事業者の制度は、それぞれ目的の異なる制度です。
この記事では、水道工事に関係する「管工事業」「水道施設工事業」「土木一式工事業」の違いと、建設業許可が必要になる金額基準について分かりやすく解説します。
目次
水道工事はいくらから建設業許可が必要?
水道工事について、1件の請負代金が500万円以上となる工事を請け負う場合は、原則として工事内容に対応する建設業許可が必要です。
建築一式工事以外の建設工事について、建設業許可を受けずに請け負えるのは、1件の請負代金が500万円未満の「軽微な建設工事」に限られます。
ここで注意したいのは、次の2点です。
- 500万円「以下」ではなく、500万円「未満」であること
- 消費税を含めた金額で判断すること
したがって、請負代金が税込500万円ちょうどの場合も、建設業許可が必要です。
また、注文者から材料や設備の支給を受ける場合は、請負代金に支給材料の市場価格と運送費を加えた金額で判断します。
水道工事に関係する建設業許可
水道工事に関係する主な建設業許可には、次の3つがあります。
| 許可業種 | 主な工事内容 |
|---|---|
| 管工事業 | 建物や敷地内の給排水・給湯設備、上水道等の配水小管など |
| 水道施設工事業 | 取水施設、浄水施設、配水施設、下水処理場内の処理設備など |
| 土木一式工事業 | 公道下等の下水道配管や、大規模で総合的な土木工事など |
工事名に「水道」と付いているだけで、水道施設工事業に分類されるわけではありません。
実際に施工する設備、場所、工事の目的などから判断する必要があります。
管工事業に該当する水道工事
管工事業とは、冷暖房、空気調和、給排水、衛生設備などのために、設備を設置したり、管を使用して水などを送配したりする工事です。
水道関係では、主に次のような工事が管工事業に該当します。
- 住宅や店舗の給水管工事
- 建物内の排水管工事
- 給湯設備工事
- キッチン、浴室、トイレなどの給排水設備工事
- 浄化槽に接続する建物内や敷地内の配管工事
- 家屋その他の施設の敷地内における配管工事
- 上水道等の配水小管を設置する工事
- 水洗便所設備工事
- 冷暖房設備工事
- 空気調和設備工事
一般住宅の新築やリフォームに伴う給排水設備工事は、管工事業に該当するケースが多いでしょう。
水道施設工事業に該当する工事
水道施設工事業とは、上水道、工業用水道などのための取水施設、浄水施設、配水施設を築造する工事や、公共下水道などの処理設備を設置する工事です。
主に次のような工事が該当します。
- 上水道の取水施設工事
- 浄水場の築造工事
- 配水池の築造工事
- 水道の配水施設工事
- 工業用水道施設工事
- 下水処理場内の処理設備工事
- 汚水処理施設工事
水道施設工事業は、家庭の蛇口につながる一般的な給排水設備工事というよりも、水道水を取り入れ、浄化し、各地域へ配水するための公共的な施設の工事が中心です。
土木一式工事業に該当する水道工事
上下水道に関係する工事のうち、公道下等に下水道管を埋設する工事は、土木一式工事に該当する場合があります。
また、下水処理場自体の敷地造成工事も、土木一式工事に分類されます。
ただし、道路を掘削して管を埋設する工事が、すべて自動的に土木一式工事になるわけではありません。
土木一式工事は、原則として複数の専門工事を総合的に企画、指導、調整して施工する工事です。
工事の規模、内容、施工方法などによっては、管工事などの専門工事に分類される可能性もあります。
契約書の工事名だけで判断せず、工事内容を具体的に確認することが必要です。
国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでは、上下水道工事の区分について、次のように整理されています。
- 公道下等の下水道の配管工事は土木一式工事
- 家屋その他の施設の敷地内の配管工事は管工事
- 上水道等の配水小管を設置する工事は管工事
- 上水道等の取水、浄水、配水施設は水道施設工事
- 下水処理場内の処理設備は水道施設工事
農業用水の工事は水道施設工事業になる?
農業用水路や、かんがい用排水施設の工事は、原則として水道施設工事業には該当しません。
これらの工事は、工事内容に応じて土木一式工事などに分類されます。
「水を流す施設だから水道施設工事」と判断することはできません。
水道施設工事業の対象となるのは、主に上水道、工業用水道、公共下水道などに関係する施設です。
管工事業と水道施設工事業の判断例
よくある水道工事について、一般的な業種区分を整理すると次のようになります。
| 工事内容 | 原則的な許可業種 |
|---|---|
| 住宅内の給水管・排水管工事 | 管工事業 |
| キッチン、浴室、トイレの給排水設備工事 | 管工事業 |
| 建物の敷地内における給排水管工事 | 管工事業 |
| 上水道の配水小管を設置する工事 | 管工事業 |
| 上水道の取水施設・浄水施設・配水施設 | 水道施設工事業 |
| 下水処理場内の処理設備工事 | 水道施設工事業 |
| 公道下等の下水道配管工事 | 土木一式工事業 |
| 下水処理場自体の敷地造成工事 | 土木一式工事業 |
| 農業用水路・かんがい用排水施設工事 | 土木一式工事業等 |
この表は一般的な判断基準です。
実際の許可業種は、個々の工事の内容、規模、契約関係などによって判断されます。
指定給水装置工事事業者とは
道路に設置された水道本管から住宅や事業所へ水を引き込む給水装置工事を行う場合、水道事業者から「指定給水装置工事事業者」の指定を受ける必要があります。
香川県では、香川県広域水道企業団が給水区域内の指定に関する手続きを行っています。
指定を受けるためには、一般的に次のような要件を満たす必要があります。
- 事業所ごとに給水装置工事主任技術者を選任すること
- 給水装置工事に必要な機械器具を備えていること
- 一定の欠格要件に該当しないこと
指定には有効期間があり、継続して給水装置工事を行うためには更新手続きも必要です。
指定給水装置工事事業者なら建設業許可は不要?
指定給水装置工事事業者であっても、建設業許可が不要になるわけではありません。
指定給水装置工事事業者の制度と建設業許可制度は、目的が異なります。
| 制度 | 主な目的 |
|---|---|
| 指定給水装置工事事業者 | 給水装置工事を適正に施工する事業者を水道事業者が指定する制度 |
| 建設業許可 | 一定規模以上の建設工事を請け負うための制度 |
指定給水装置工事事業者であっても、1件の請負代金が税込500万円以上となる管工事を請け負う場合は、原則として管工事業の建設業許可が必要です。
一方、管工事業の建設業許可を取得していても、それだけで給水装置工事を行えるとは限りません。
給水装置工事を行う場合は、建設業許可とは別に、水道事業者から指定を受ける必要があります。
給水装置工事主任技術者がいれば建設業許可を取れる?
給水装置工事主任技術者の資格があれば、指定給水装置工事事業者の指定に必要な人的要件を満たせる可能性があります。
しかし、給水装置工事主任技術者の資格だけで、管工事業の建設業許可に必要な営業所技術者等の要件を当然に満たすとは限りません。
管工事業の建設業許可を取得するためには、施工管理技士などの対象資格や、一定期間の実務経験などを確認する必要があります。
建設業許可の技術者要件と、指定給水装置工事事業者の主任技術者要件は、分けて考えましょう。
建築一式工事業の許可があれば水道工事もできる?
建築一式工事業の許可を持っていても、それだけで税込500万円以上の給排水設備工事を単独で請け負えるわけではありません。
建物の新築工事全体を元請として請け負い、その一部として給排水設備工事を施工する場合と、給排水設備工事だけを専門工事として請け負う場合では、必要となる許可が異なります。
給排水設備工事だけを税込500万円以上で請け負う場合は、原則として管工事業の許可が必要です。
「建築一式工事業があるから、建物に関係する工事はすべて受注できる」とは限らないため、注意しましょう。
水道工事業者が建設業許可を取得するメリット
現在は500万円未満の工事が中心でも、将来を考えて建設業許可を取得する事業者は少なくありません。
500万円以上の工事を受注できる
店舗、工場、集合住宅、公共施設などの給排水設備工事では、請負金額が500万円以上になることがあります。
建設業許可があれば、工事金額を理由に受注を断るリスクを減らせます。
元請会社や取引先からの信用につながる
建設業許可を取得するためには、経営体制、技術者、財産的基礎、社会保険などの要件を満たす必要があります。
そのため、一定の事業体制を整えた会社として、元請会社や取引先から評価されやすくなります。
公共工事への参入を目指せる
地方公共団体などが発注する水道工事へ元請として参加するためには、原則として建設業許可が必要です。
さらに、経営事項審査を受け、希望する発注機関の入札参加資格を取得する必要があります。
建設業許可の取得は、公共工事へ参入するための第一歩です。
事業拡大に対応しやすくなる
工事の規模が大きくなってから建設業許可を申請すると、契約予定日に許可取得が間に合わない可能性があります。
今後、大型工事や元請工事を増やしたい場合は、早めに許可取得の準備を始めることが大切です。
水道工事業者によくあるケース
ケース1 住宅の水回り工事だけを行っている
住宅内や敷地内の給排水設備工事は、一般的に管工事に該当します。
1件の請負代金が常に税込500万円未満であれば、建設業許可が不要となる可能性があります。
ただし、給水装置工事を行う場合は、指定給水装置工事事業者の指定について別途確認が必要です。
ケース2 500万円以上の給排水設備工事を受注したい
住宅、店舗、工場などの給排水設備工事を税込500万円以上で単独受注する場合は、原則として管工事業の建設業許可が必要です。
注文者から支給される設備や材料がある場合は、その市場価格なども含めて判断します。
ケース3 浄水場の設備工事を受注したい
上水道の取水、浄水、配水施設を築造する工事は、一般的に水道施設工事業に該当します。
ただし、施設内の電気設備、配管設備、機械設備などを個別に請け負う場合は、電気工事業、管工事業、機械器具設置工事業などに分類される可能性があります。
ケース4 公共下水道の管を道路下に埋設する
公道下等に下水道管を設置する工事は、一般的に土木一式工事に該当します。
ただし、工事の規模や施工内容によって判断が異なる可能性があるため、発注内容や設計書などを確認する必要があります。
ケース5 管工事業の許可はあるが水道施設工事業の許可がない
管工事業の許可だけでは、税込500万円以上の水道施設工事を単独で請け負うことはできません。
浄水場や配水施設などの工事を受注する場合は、水道施設工事業の許可が必要になる可能性があります。
水道工事を受注する前の確認事項
水道工事を受注するときは、少なくとも次の事項を確認しましょう。
- 工事の請負代金は税込500万円以上か
- 注文者から支給される材料や設備はあるか
- 工事を行う場所は建物内、敷地内、公道下、処理施設内のどこか
- 給排水設備工事、配水小管、取水施設、浄水施設などのどれに該当するか
- 管工事業、水道施設工事業、土木一式工事業のどの許可が必要か
- 指定給水装置工事事業者の指定が必要か
- 公共工事の場合は経審や入札参加資格が必要か
契約後に必要な許可がないことが判明すると、工事を受注できなくなる可能性があります。
判断に迷う場合は、契約を締結する前に確認することが重要です。
まとめ
水道工事に必要な建設業許可は、工事の場所や内容によって異なります。
主なポイントは次のとおりです。
- 住宅や建物の敷地内の給排水設備工事は、原則として管工事
- 上水道等の配水小管を設置する工事は、原則として管工事
- 取水施設、浄水施設、配水施設は、原則として水道施設工事
- 公道下等の下水道配管工事は、土木一式工事に該当する場合がある
- 農業用水やかんがい用排水施設は、水道施設工事には該当しない
- 税込500万円以上の工事には、原則として対応する建設業許可が必要
- 指定給水装置工事事業者と建設業許可は別の制度
「自社の工事が管工事と水道施設工事のどちらに該当するか分からない」
「現在持っている許可で、予定している工事を受注できるか確認したい」
「指定給水装置工事事業者の指定と建設業許可をまとめて相談したい」
このような場合は、工事を受注する前に専門家へ相談することをおすすめします。
山岡正士行政書士事務所では、三豊市・観音寺市を中心に、香川県内の建設業許可申請、決算変更届、経営事項審査、入札参加資格申請をサポートしています。
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