建物の新築や改修、外壁塗装、屋根工事、解体工事など、さまざまな建設現場で必要になるのが足場です。
足場工事を行っている事業者の方から、次のようなご相談を受けることがあります。
「足場の組立てだけを請け負う場合、建設業許可は必要ですか」
「塗装工事業の許可があれば、足場も自社で施工できますか」
「足場材を貸し出すだけでも、建設業許可が必要ですか」
足場の組立てや解体は、建設業法上の「とび・土工・コンクリート工事」に該当します。
ただし、足場工事を単独で請け負う場合と、塗装工事などに附帯して施工する場合では、必要な許可の考え方が異なります。
この記事では、足場工事に建設業許可が必要となる金額基準、附帯工事として施工できるケース、足場材のレンタルとの違いなどを分かりやすく解説します。
目次
足場工事は「とび・土工・コンクリート工事」に該当する
足場の組立てや解体は、建設業法上の「とび・土工・コンクリート工事」に該当します。
とび・土工・コンクリート工事に含まれる代表的な工事は、次のとおりです。
- 足場等仮設工事
- とび工事
- ひき工事
- 重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事
- 鉄骨組立て工事
- コンクリートブロック据付け工事
- くい工事
- 土工事
- 掘削工事
- 盛土工事
- コンクリート工事
- 地盤改良工事
- 法面保護工事
- 外構工事
足場を設置する目的が外壁塗装、屋根工事、建物解体などであっても、足場の組立てや解体そのものは「とび・土工・コンクリート工事」に分類されます。
国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでも、「足場等仮設工事」は、とび・土工・コンクリート工事の例として示されています。
足場工事はいくらから建設業許可が必要?
足場工事について、1件の請負代金が500万円以上となる工事を請け負う場合は、原則として「とび・土工工事業」の建設業許可が必要です。
建築一式工事以外の建設工事について、建設業許可を受けずに請け負えるのは、1件の請負代金が500万円未満の軽微な建設工事に限られます。
注意したいのは、次の2点です。
- 500万円「以下」ではなく、500万円「未満」であること
- 消費税を含めた金額で判断すること
したがって、足場工事の請負代金が税込500万円ちょうどの場合も、建設業許可が必要です。
足場材の代金や運送費も含めて判断する
建設業許可が必要かどうかは、足場の組立て作業に対する人件費だけで判断するものではありません。
請負代金には、通常、足場工事に必要な次のような費用が含まれます。
- 足場の組立て費用
- 足場の解体費用
- 足場材の使用料
- 運搬費
- 養生シート等の費用
- その他の工事に必要な費用
また、注文者から足場材などの支給を受ける場合は、原則として請負代金に支給材料の市場価格と運送費を加えた金額で判断します。
例えば、足場の組立て・解体費用が400万円であっても、注文者から150万円相当の足場材が支給される場合、合計額は550万円になります。
この場合、軽微な建設工事の範囲を超えるため、建設業許可が必要になる可能性があります。
工期ごとに契約を分ければ許可は不要?
一つの足場工事を複数の契約に分け、それぞれの金額を500万円未満にすれば許可が不要になるわけではありません。
正当な理由がなく、同一の建設工事を形式的に分割した場合は、分割された各契約の請負代金を合計して判断される可能性があります。
例えば、一つのマンション改修工事について、次のように契約を分けたとします。
- 足場組立て工事 300万円
- 足場解体工事 250万円
契約書が別々でも、実質的に一つの足場工事であれば、合計550万円の工事と判断される可能性があります。
契約書の形式ではなく、工事の実態に基づいて判断することが重要です。
足場工事を単独で請け負う場合
足場業者が元請会社や塗装業者、解体業者などから、足場の組立て・解体だけを請け負う場合は、足場工事を独立した専門工事として受注することになります。
この場合、請負代金が税込500万円以上であれば、原則として「とび・土工工事業」の建設業許可が必要です。
これは、下請として足場工事を受注する場合も同じです。
「元請ではなく下請だから許可は不要」というわけではありません。
建設業許可の必要性は、元請・下請の区別ではなく、原則として1件の請負代金と工事内容によって判断します。
塗装工事に伴う足場は附帯工事になる?
外壁塗装や屋根塗装を施工するためには、作業用の足場が必要になることがあります。
塗装工事業者が外壁塗装を主たる工事として請け負い、その施工に必要な足場も一緒に請け負う場合は、足場工事が塗装工事の附帯工事として扱われる可能性があります。
附帯工事とは、許可を受けた主たる建設工事を施工するために必要となる、他の業種の工事です。
例えば、次のような組み合わせが考えられます。
- 外壁塗装工事と、その施工に必要な足場
- 屋根工事と、その施工に必要な足場
- 防水工事と、その施工に必要な足場
- 解体工事と、その施工に必要な足場
ただし、主たる工事との関連性がなく、足場工事だけでも独立した工事として受注できる場合は、当然に附帯工事として扱えるわけではありません。
工事の目的、契約内容、金額の割合などを確認して判断する必要があります。
附帯工事なら自由に自社施工できる?
足場工事を附帯工事として一緒に請け負える場合でも、許可を持っていない足場工事を自由に自社施工できるとは限りません。
附帯工事を自社で施工する場合は、原則として、その工事に対応する資格や実務経験を持つ専門技術者を現場に配置する必要があります。
専門技術者を配置できない場合は、足場工事に必要な建設業許可を持つ専門業者へ施工させる必要があります。
ただし、附帯工事自体が軽微な建設工事に該当する場合は、専門技術者の配置が不要となることがあります。
例えば、塗装工事業の許可だけを持つ事業者が、大規模な足場工事を自社で施工する場合は、次のいずれかを確認する必要があります。
- とび・土工工事業の許可を追加取得する
- 足場工事の専門技術者を配置する
- とび・土工工事業の許可を持つ業者へ施工させる
契約できるかどうかと、自社で施工できるかどうかは、分けて考える必要があります。
足場材を貸し出すだけなら建設業許可は必要?
足場材を貸し出すだけで、組立てや解体などの工事を一切行わない場合は、一般的には物品の賃貸であり、建設工事の請負には該当しません。
そのため、足場材のレンタルだけであれば、通常は建設業許可の対象にはなりません。
一方、次の業務を含む場合は注意が必要です。
- 足場材の搬入
- 現場での足場の組立て
- 足場の変更や盛替え
- 工事終了後の足場解体
- 足場材の搬出
単に足場材を貸し出すだけではなく、現場での組立てや解体まで請け負う場合は、建設工事に該当する可能性があります。
契約書や見積書に「足場レンタル」と書かれていても、実際の業務内容に組立て・解体が含まれていれば、契約の実態に基づいて判断されます。
建築一式工事業の許可があれば足場工事もできる?
建築一式工事業の許可を持っていても、それだけで税込500万円以上の足場工事を単独で請け負えるわけではありません。
建築一式工事は、建築物を総合的に企画、指導、調整して建設する工事です。
足場の組立て・解体だけを専門工事として請け負う場合は、原則として、とび・土工工事業の許可が必要です。
建物に関係する工事であっても、建築一式工事業の許可ですべての専門工事を単独受注できるわけではありません。
解体工事業の許可があれば足場も施工できる?
建物の解体工事では、粉じんや解体物の飛散防止などのため、養生シートを含む足場を設置することがあります。
解体工事に必要な足場であれば、解体工事に附帯する工事として一緒に請け負える可能性があります。
しかし、解体工事業の許可だけで、他社の建築工事や塗装工事に使用する税込500万円以上の足場工事を単独受注できるわけではありません。
足場工事を独立して請け負う場合は、とび・土工工事業の許可が必要か確認しましょう。
足場工事の建設業許可を取得するメリット
現在は500万円未満の足場工事が中心でも、将来の事業展開を考えて建設業許可を取得する事業者は少なくありません。
500万円以上の足場工事を受注できる
マンション、工場、大型店舗、公共施設などの改修工事では、足場工事だけで請負金額が500万円以上になることがあります。
建設業許可があれば、工事金額を理由に受注を断るリスクを減らせます。
元請会社からの信用につながる
建設業許可を取得するためには、経営体制、技術者、財産的基礎、社会保険などの要件を満たす必要があります。
そのため、一定の施工体制を整えた事業者として、元請会社や取引先から評価されやすくなります。
大規模な改修工事に対応しやすくなる
マンションや工場の改修工事では、建物全体を覆う大規模な足場が必要になることがあります。
将来的に大型案件を増やしたい場合は、受注の機会を逃さないためにも、早めに許可取得を検討することが大切です。
公共工事への参入を目指せる
公共工事を元請として直接受注するためには、建設業許可に加え、経営事項審査や入札参加資格申請などが必要です。
足場工事を含む、とび・土工・コンクリート工事の公共工事へ参入する場合、建設業許可の取得が第一歩になります。
足場工事業の許可取得で確認される主な要件
一般建設業許可を取得するためには、主に次の要件を満たす必要があります。
- 建設業の経営について適切な管理体制があること
- 営業所ごとに一定の資格や実務経験を持つ営業所技術者等がいること
- 請負契約について誠実性があること
- 500万円以上の資金調達能力など、財産的基礎があること
- 欠格要件に該当しないこと
- 適切に社会保険へ加入していること
とび・土工工事業では、土木施工管理技士、建築施工管理技士、建設機械施工管理技士、とび技能士などの資格や、一定期間の実務経験によって、営業所技術者等の要件を満たせる可能性があります。
資格の種類や等級によって、追加の実務経験が必要になる場合があります。
現在保有している資格だけで判断せず、これまでの工事経験を証明できる資料も確認しましょう。
建設業許可と労働安全衛生法上の資格は別
とび・土工工事業の建設業許可を取得していても、それだけで足場作業に必要な安全衛生上の要件をすべて満たすわけではありません。
足場の組立て、解体または変更の作業では、足場の種類や高さなどに応じて、次のような資格・教育が必要になることがあります。
- 足場の組立て等作業主任者
- 足場の組立て等の業務に係る特別教育
- フルハーネス型墜落制止用器具に関する特別教育
建設業許可は、事業者が一定規模以上の工事を請け負うための制度です。
一方、作業主任者や特別教育は、現場で安全に作業するための制度です。
それぞれ目的が異なるため、両方の要件を確認する必要があります。
よくあるケース
ケース1 戸建住宅の足場だけを請け負っている
1件の請負代金が常に税込500万円未満であれば、建設業許可が不要となる可能性があります。
ただし、安全衛生上必要な作業主任者の選任や特別教育などについては、工事金額に関係なく確認が必要です。
ケース2 マンションの足場工事が600万円になる
足場工事だけを税込600万円で請け負う場合は、原則として、とび・土工工事業の建設業許可が必要です。
元請工事か下請工事かにかかわらず、許可の要否を確認しなければなりません。
ケース3 外壁塗装と足場をまとめて受注する
外壁塗装を主たる工事として受注し、その施工に必要な足場を設置する場合は、足場が塗装工事の附帯工事として扱われる可能性があります。
ただし、自社で足場を施工する場合は、専門技術者の配置や安全衛生上の資格について確認が必要です。
ケース4 元請会社から足場材のレンタルと組立てを依頼された
足場材の貸出しだけであれば物品の賃貸となる可能性がありますが、現場での組立て・解体を含む場合は、足場工事の請負に該当する可能性があります。
契約書の名称ではなく、実際の業務内容で判断します。
ケース5 解体工事用の足場を自社で設置する
自社が受注した解体工事を施工するために必要な足場であれば、解体工事の附帯工事として扱われる可能性があります。
ただし、足場だけを独立して他社から受注する場合は、とび・土工工事業の許可が必要かを別途確認します。
足場工事を受注する前の確認事項
足場工事を受注するときは、少なくとも次の事項を確認しましょう。
- 請負代金は消費税込みで500万円以上か
- 足場材の使用料や運送費を含めた金額はいくらか
- 注文者から支給される材料があるか
- 足場工事を単独で請け負うのか
- 塗装工事や解体工事などに附帯する工事なのか
- 足場を自社で施工するのか、専門業者へ依頼するのか
- 専門技術者を配置できるか
- 作業主任者や特別教育などの安全衛生上の要件を満たしているか
- 現在の建設業許可で対応できるか
契約後に必要な許可がないことが判明すると、工事を施工していなくても建設業法上の問題になる可能性があります。
大型案件の相談があった場合は、見積書の提出や契約締結の前に確認することが重要です。
まとめ
足場の組立てや解体は、建設業法上の「とび・土工・コンクリート工事」に該当します。
主なポイントは次のとおりです。
- 税込500万円以上の足場工事には、原則として、とび・土工工事業の許可が必要
- 下請工事であっても、500万円以上なら許可が必要
- 足場材の使用料や運送費なども含めて請負金額を判断する
- 契約を形式的に分割しても、同一工事なら合計額で判断される可能性がある
- 塗装工事や解体工事に必要な足場は、附帯工事として扱われる場合がある
- 附帯工事を自社施工する場合は、専門技術者の配置が必要になることがある
- 足場材の貸出しだけの場合と、組立て・解体を含む場合では扱いが異なる
- 建設業許可とは別に、作業主任者や特別教育などの安全衛生上の要件がある
「足場工事の許可が必要か判断できない」
「塗装工事と足場工事をまとめて受注しても問題がないか確認したい」
「現在の資格や実務経験で、とび・土工工事業の許可を取得できるか知りたい」
このような場合は、工事の契約を締結する前に専門家へ相談することをおすすめします。
山岡正士行政書士事務所では、三豊市・観音寺市を中心に、香川県内の建設業許可申請、業種追加、決算変更届、経営事項審査、入札参加資格申請をサポートしています。
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