住宅や事業所などに浄化槽を設置する工事を行う場合、工事金額が小さければ、建設業許可は必要ないことがあります。
しかし、建設業許可が不要だからといって、何の手続きもせずに浄化槽工事を行えるわけではありません。
浄化槽工事業を営むためには、工事の規模や取得している建設業許可に応じて、次のいずれかの手続きが必要です。
- 浄化槽工事業者の登録
- 特例浄化槽工事業者の届出
- 管工事業の建設業許可
この記事では、浄化槽工事業の登録と建設業許可の違い、500万円基準、香川県で必要となる手続きを分かりやすく解説します。
目次
浄化槽工事とは
浄化槽工事とは、浄化槽を設置したり、その構造や規模を変更したりする工事をいいます。
例えば、次のような工事が該当します。
- 住宅への合併処理浄化槽の設置
- 既存の浄化槽の入替え
- 浄化槽の構造または規模を変更する工事
- 浄化槽本体の設置に伴う工事
浄化槽の保守点検や清掃だけを行う事業と、浄化槽を設置する「浄化槽工事業」は、それぞれ異なる制度によって規制されています。
この記事では、浄化槽の設置工事を請け負う事業者に必要な手続きを取り上げます。
浄化槽工事はいくらから建設業許可が必要?
浄化槽工事について、1件の請負代金が500万円以上となる工事を請け負う場合は、原則として建設業許可の「管工事業」が必要です。
建築一式工事以外の建設工事について、許可を受けずに請け負えるのは、1件の請負代金が500万円未満の「軽微な建設工事」に限られます。
注意したいのは、次の2点です。
- 500万円「以下」ではなく、500万円「未満」であること
- 消費税を含めた金額で判断すること
したがって、請負代金が税込500万円ちょうどの場合も、管工事業の建設業許可が必要です。
香川県も、浄化槽工事業の登録制度とは別に、建設業法上の許可が必要になる場合があることを案内しています。香川県「浄化槽工事業を営もうとする皆さんへ」
注文者から支給される材料にも注意
500万円の基準は、契約書に記載された請負代金だけで判断するとは限りません。
注文者から工事に必要な材料や設備の支給を受ける場合は、原則として次の金額を合計して判断します。
- 工事の請負代金
- 支給材料の市場価格
- 支給材料の運送費
例えば、浄化槽工事の請負代金が400万円であっても、注文者から150万円相当の浄化槽本体が支給される場合、合計額は550万円になります。
この場合は軽微な建設工事の範囲を超えるため、原則として管工事業の建設業許可が必要です。
500万円未満なら登録も届出も不要?
請負代金が500万円未満であれば、建設業許可が不要になる可能性はあります。
しかし、浄化槽工事業者の登録または届出まで不要になるわけではありません。
必要となる手続きは、次のように分かれます。
| 事業者の状況 | 必要となる手続き |
|---|---|
| 土木工事業・建築工事業・管工事業の許可がない | 浄化槽工事業者の登録 |
| 上記3業種のいずれかの建設業許可がある | 特例浄化槽工事業者の届出 |
| 税込500万円以上の浄化槽工事を請け負う | 原則として管工事業の建設業許可も必要 |
つまり、500万円未満の工事だけを行う場合でも、浄化槽工事業者としての登録または届出が必要です。
「登録」と「特例届出」の違い
建設業許可を持っていない場合
次の建設業許可をいずれも持っていない事業者が浄化槽工事業を営む場合は、「浄化槽工事業者の登録」が必要です。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 管工事業
登録には有効期間があり、継続して事業を行う場合は更新手続きが必要です。
対象となる建設業許可を持っている場合
土木工事業、建築工事業または管工事業のいずれかの建設業許可を持っている場合は、浄化槽工事業者の登録は不要です。
ただし、何も手続きをしなくてもよいわけではなく、「特例浄化槽工事業者」として届出を行う必要があります。
建設業許可を持っていることを理由に、浄化槽工事業法上の届出を忘れないよう注意しましょう。
建築工事業や土木工事業の許可だけで500万円以上の工事はできる?
特例浄化槽工事業者の届出は、土木工事業、建築工事業または管工事業のいずれかの許可があれば行うことができます。
しかし、これは「いずれかの許可があれば、500万円以上の浄化槽工事を単独で請け負える」という意味ではありません。
500万円以上の浄化槽工事を専門工事として請け負う場合は、原則として「管工事業」の建設業許可が必要です。
例えば、建築工事業の許可だけを持つ会社が、600万円の浄化槽設置工事だけを単独で請け負う場合、建築工事業の許可だけでは対応できない可能性があります。
建設業許可の業種と、浄化槽工事業法上の登録・届出は分けて判断する必要があります。
工事を行う都道府県ごとに手続きが必要
浄化槽工事業の登録や特例届出は、営業所の所在地だけで判断するものではありません。
原則として、実際に浄化槽工事を行う区域を管轄する都道府県ごとに手続きが必要です。
例えば、香川県にだけ営業所がある事業者が、
- 香川県内だけで工事を行う場合は香川県
- 香川県と愛媛県で工事を行う場合は香川県と愛媛県
というように、それぞれの県で登録または届出を行う必要があります。
県外工事を新たに始める場合は、工事を受注する前に、その都道府県で必要な手続きを確認しましょう。
営業所ごとに浄化槽設備士が必要
浄化槽工事業者は、営業所ごとに浄化槽設備士を置く必要があります。
また、浄化槽工事を行うときは、浄化槽設備士が実地に監督することが原則です。
浄化槽設備士は、浄化槽工事に必要な専門知識や技能を持つことを証明する国家資格です。
建設業許可の営業所技術者等と浄化槽設備士は、制度上の役割が異なります。そのため、管工事業の建設業許可を取得していても、浄化槽工事を行うための体制を別に確認しなければなりません。
よくあるケース
ケース1 小規模な浄化槽工事だけを行いたい
請負代金がすべて500万円未満であれば、管工事業の建設業許可は不要となる可能性があります。
ただし、対象となる建設業許可を持っていなければ、浄化槽工事業者の登録が必要です。
「金額が小さいから手続きは不要」と判断しないようにしましょう。
ケース2 管工事業の建設業許可を持っている
管工事業の許可があれば、500万円以上の浄化槽工事を請け負うための建設業法上の要件を満たせる可能性があります。
ただし、浄化槽工事業法に基づく「特例浄化槽工事業者」の届出が別途必要です。
ケース3 土木工事業の許可だけを持っている
土木工事業の許可があれば、浄化槽工事業の「登録」に代えて、特例浄化槽工事業者の届出を行います。
ただし、500万円以上の浄化槽工事を専門工事として単独で請け負う場合は、原則として管工事業の許可が必要です。
ケース4 香川県外でも浄化槽工事を行いたい
香川県で登録または届出をしていても、その手続きが自動的に全国で有効になるわけではありません。
工事を行う都道府県ごとに、登録または届出が必要です。
ケース5 建設業許可を新たに取得した
浄化槽工事業者として登録していた事業者が、土木工事業、建築工事業または管工事業の許可を取得した場合は、特例浄化槽工事業者への切替えに関する手続きが必要です。
建設業許可を取得しただけで終わらせず、浄化槽工事業法上の手続きも確認しましょう。
登録・届出後にも変更手続きがある
登録または届出をした後、次のような事項に変更が生じた場合は、変更手続きが必要になることがあります。
- 商号または名称
- 住所
- 法人の代表者
- 営業所
- 浄化槽設備士
- 建設業許可の番号や有効期間
特例浄化槽工事業者の場合、建設業許可を更新したときも、許可番号や許可年月日の変更に伴う届出が必要になることがあります。
建設業許可の更新手続きだけで、関連する登録や届出も自動的に更新されるわけではありません。
浄化槽工事業を始める前の確認事項
浄化槽工事を新たに始める場合は、少なくとも次の事項を確認しましょう。
- 予定している工事の請負金額
- 注文者から支給される材料の有無
- 現在取得している建設業許可の業種
- 管工事業の許可が必要か
- 工事を行う都道府県
- 営業所ごとの浄化槽設備士の配置
- 登録と特例届出のどちらが必要か
特に、建設業許可と浄化槽工事業の登録・届出は別の制度です。どちらか一方だけを確認して判断すると、必要な手続きが漏れるおそれがあります。
まとめ
浄化槽工事業を営む場合は、工事金額と現在取得している建設業許可によって、必要な手続きが異なります。
主なポイントは次のとおりです。
- 税込500万円以上の浄化槽工事には、原則として管工事業の建設業許可が必要
- 500万円未満でも、浄化槽工事業者の登録または特例届出が必要
- 土木工事業・建築工事業・管工事業の許可がある場合は特例届出を行う
- 営業所ごとに浄化槽設備士を置く必要がある
- 工事を行う都道府県ごとに登録または届出が必要
- 建設業許可の更新後などにも変更手続きが必要になることがある
「自社には登録と届出のどちらが必要か分からない」
「現在の許可で500万円以上の浄化槽工事を受注できるか確認したい」
「管工事業の建設業許可も取得したい」
このような場合は、工事を受注する前に確認することが大切です。
山岡正士行政書士事務所では、三豊市・観音寺市を中心に、香川県内の建設業許可申請や浄化槽工事業の手続きをサポートしています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
