外壁塗装や屋根塗装を行っている事業者の方から、次のようなご相談を受けることがあります。
「塗装工事が500万円を超えそうですが、建設業許可は必要ですか」
「塗装工事業の許可があれば、防水工事も請け負えますか」
「シーリング工事は、塗装工事と防水工事のどちらに該当しますか」
住宅やマンションの改修工事では、外壁塗装と防水工事を一緒に行うことが多いため、必要な建設業許可の判断が難しくなることがあります。
しかし、建設業法上では「塗装工事」と「防水工事」は別の業種です。
この記事では、塗装工事業者に建設業許可が必要となる金額基準、塗装工事と防水工事の違い、複数の工事をまとめて受注する場合の注意点を解説します。
目次
- 塗装工事はいくらから建設業許可が必要?
- 注文者から支給される材料も金額に含まれる
- 契約を分ければ500万円未満になる?
- 塗装工事業に該当する工事
- 防水工事業に該当する工事
- 塗装工事と防水工事の違い
- シーリング工事は塗装工事ではない?
- 防水モルタル工事はどの業種?
- トンネルの防水工事も防水工事業になる?
- 塗装工事業の許可があれば防水工事もできる?
- 附帯工事とは
- 足場工事を含む場合の注意点
- 建築一式工事業の許可があれば塗装工事もできる?
- 外壁改修工事を一括受注する場合
- 塗装工事業の建設業許可を取得するメリット
- 塗装工事業の許可取得で確認される主な要件
- よくあるケース
- 工事を受注する前の確認事項
- まとめ
塗装工事はいくらから建設業許可が必要?
塗装工事について、1件の請負代金が500万円以上となる工事を請け負う場合は、原則として「塗装工事業」の建設業許可が必要です。
建築一式工事以外の建設工事について、許可を受けずに請け負えるのは、1件の請負代金が500万円未満の「軽微な建設工事」に限られます。
ここで注意したいのは、次の2点です。
- 500万円「以下」ではなく、500万円「未満」であること
- 消費税を含めた金額で判断すること
したがって、請負代金が税込500万円ちょうどの場合も、建設業許可が必要です。
注文者から支給される材料も金額に含まれる
建設業許可が必要かどうかは、契約書に記載された工事代金だけで判断するとは限りません。
注文者から塗料やその他の工事材料の支給を受ける場合は、原則として次の金額を合計して判断します。
- 工事の請負代金
- 支給材料の市場価格
- 支給材料の運送費
例えば、塗装工事の請負代金が450万円であっても、注文者から100万円相当の塗料が支給される場合、合計額は550万円になります。
この場合、軽微な建設工事の範囲を超えるため、原則として塗装工事業の建設業許可が必要です。
契約を分ければ500万円未満になる?
一つの塗装工事を複数の契約書に分け、それぞれを500万円未満にすれば許可が不要になるわけではありません。
正当な理由がなく、同一の工事を形式的に分割した場合は、各契約の請負代金を合計して判断される可能性があります。
例えば、実質的には一つのマンション外壁塗装工事であるにもかかわらず、次のように契約を分けたとします。
- 下地処理工事 200万円
- 外壁塗装工事 250万円
- 仕上げ工事 150万円
契約書が3通に分かれていても、一つの工事として合計600万円と判断される可能性があります。
大型工事の相談を受けた場合は、見積書の提出や契約締結の前に、建設業許可の要否を確認しましょう。
塗装工事業に該当する工事
塗装工事とは、塗料や塗材などを工作物に吹き付け、塗り付け、または貼り付ける工事をいいます。
代表的な工事は次のとおりです。
- 住宅や店舗の外壁塗装工事
- 屋根塗装工事
- 建物内部の塗装工事
- 鉄骨や鋼構造物の塗装工事
- 橋梁塗装工事
- 溶射工事
- ライニング工事
- 布張り仕上工事
- 路面標示工事
- 区画線工事
塗装前に行う下地調整やブラスト処理については、通常、塗装工事の準備作業として塗装工事に含まれます。
国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでも、下地調整工事とブラスト工事は、通常の塗装工事に含まれるものとされています。
防水工事業に該当する工事
防水工事とは、アスファルト、モルタル、シーリング材などを使用して、建築物への水の浸入を防ぐ工事です。
代表的な工事は次のとおりです。
- アスファルト防水工事
- モルタル防水工事
- シーリング工事
- 塗膜防水工事
- シート防水工事
- 注入防水工事
- ベランダやバルコニーの防水工事
- マンション屋上の防水工事
- 外壁の目地部分のシーリング工事
塗料に似た材料を塗る工事であっても、主な目的が建物への水の浸入を防止することであれば、防水工事に該当する可能性があります。
塗装工事と防水工事の違い
塗装工事と防水工事の大きな違いは、工事の目的と使用する材料です。
| 区分 | 主な目的 | 工事例 |
|---|---|---|
| 塗装工事 | 工作物の表面を塗装し、美観の向上や保護を行う | 外壁塗装、屋根塗装、鉄骨塗装、路面標示 |
| 防水工事 | 建築物への水の浸入を防ぐ | 屋上防水、塗膜防水、シート防水、シーリング |
| 屋根工事 | 屋根材を使用して屋根を施工する | 瓦屋根、スレート屋根、金属屋根 |
例えば、既存の屋根材へ塗料を塗る工事は、一般的に塗装工事です。
一方、屋根材そのものを交換したり、新たに金属板などで屋根を施工したりする工事は、屋根工事に該当する可能性があります。
「屋根に関する工事だから、すべて屋根工事」というわけではありません。実際の施工内容によって判断する必要があります。
シーリング工事は塗装工事ではない?
外壁塗装に伴って行われることが多いシーリング工事は、建設業法上、原則として防水工事に分類されます。
シーリング工事とは、外壁材の継ぎ目やサッシ周辺などにシーリング材を充填し、雨水の浸入を防ぐ工事です。
外壁塗装とシーリング工事をまとめて施工する場合でも、それぞれ次の業種に該当します。
- 外壁への塗料の塗付け:塗装工事
- 外壁目地のシーリング:防水工事
請負金額が大きい場合は、塗装工事業と防水工事業のどちらの許可が必要になるかを、契約内容に基づいて確認する必要があります。
防水モルタル工事はどの業種?
防水モルタルを使用した防水工事については、国土交通省の業種区分上、次のいずれの許可でも施工できるとされています。
- 左官工事業
- 防水工事業
ただし、通常のモルタル仕上げ工事や建物にモルタルを吹き付ける工事は、左官工事に該当する場合があります。
同じモルタルを使用する工事でも、施工方法や工事の目的によって業種区分が異なるため、注意が必要です。
トンネルの防水工事も防水工事業になる?
防水工事業に含まれるのは、原則として建築物に対する防水工事です。
トンネル防水工事などの土木系の防水工事は、防水工事業ではなく「とび・土工・コンクリート工事業」に該当します。
したがって、防水工事業の許可を持っているだけでは、税込500万円以上のトンネル防水工事を単独で請け負えない可能性があります。
工事名に「防水」と記載されていても、建築系の防水工事なのか、土木系の防水工事なのかを確認する必要があります。
塗装工事業の許可があれば防水工事もできる?
塗装工事業と防水工事業は、建設業法上、別の許可業種です。
そのため、塗装工事業の許可を持っているだけで、税込500万円以上の防水工事を単独で請け負うことはできません。
反対に、防水工事業の許可を持っていても、税込500万円以上の塗装工事を単独で請け負う場合は、原則として塗装工事業の許可が必要です。
外壁改修工事として塗装と防水を一括して請け負う場合は、次の点を確認します。
- 契約全体の主な目的
- 塗装工事と防水工事のそれぞれの金額
- どちらが主たる工事か
- もう一方の工事が附帯工事に該当するか
- 各工事を自社施工するか、専門業者へ下請に出すか
単純に見積書の金額を分けるだけで判断することはできません。
附帯工事とは
建設業者は、許可を受けた建設工事を請け負う際、その工事に附帯する他の業種の工事を一緒に請け負える場合があります。
例えば、外壁塗装工事を施工するために必要となる小規模なシーリング補修などが、塗装工事に附帯する工事として扱われる可能性があります。
ただし、附帯工事として認められるためには、主たる工事と一体性や関連性があることが必要です。
独立した工事として施工できる大規模な屋上防水工事を、当然に塗装工事の附帯工事として扱えるわけではありません。
また、許可を持っていない附帯工事を自社で施工する場合は、その業種に対応した専門技術者を配置するか、必要な許可を持つ専門業者へ施工させる必要があります。
足場工事を含む場合の注意点
外壁塗装や防水工事では、作業用の足場を設置することがあります。
足場の組立て工事は、一般的に「とび・土工・コンクリート工事」に該当します。
塗装工事を行うために必要な足場であれば、塗装工事に附帯する工事として一緒に請け負える場合があります。
ただし、足場工事を独立した工事として税込500万円以上で請け負う場合は、原則として、とび・土工・コンクリート工事業の許可が必要です。
また、足場工事を自社施工する場合は、建設業法上の技術者だけでなく、労働安全衛生法上の作業主任者などの要件も確認しなければなりません。
建築一式工事業の許可があれば塗装工事もできる?
建築一式工事業の許可を持っていても、それだけで税込500万円以上の塗装工事や防水工事を単独で請け負えるわけではありません。
建築一式工事は、建築物を総合的に企画、指導、調整して建設する工事です。
外壁塗装工事だけ、または屋上防水工事だけを専門工事として請け負う場合は、それぞれ次の許可が必要です。
- 税込500万円以上の塗装工事:塗装工事業
- 税込500万円以上の防水工事:防水工事業
「建築一式工事業の許可があるから、建物に関係する工事はすべて受注できる」とは限らないため、注意しましょう。
外壁改修工事を一括受注する場合
マンションや事業所の外壁改修工事では、複数の専門工事が含まれることがあります。
例えば、次のような工事です。
- 足場設置
- 外壁の下地補修
- シーリング工事
- 外壁塗装
- ベランダ防水
- 屋上防水
- 雨樋の補修
- タイルの補修
複数の工事をまとめて受注するときは、工事件名だけで建築一式工事と判断することはできません。
それぞれの施工内容、金額、工事の目的、主たる工事と附帯工事の関係などを確認したうえで、必要な許可業種を判断します。
特に、塗装工事業だけを持つ事業者が、塗装よりも防水工事の割合が大きい工事を受注する場合は、契約前の確認が重要です。
塗装工事業の建設業許可を取得するメリット
現在は500万円未満の住宅塗装が中心でも、今後の事業展開を考えて建設業許可を取得する事業者は少なくありません。
500万円以上の塗装工事を受注できる
マンション、工場、店舗、公共施設などの塗装工事では、請負金額が500万円以上になることがあります。
建設業許可があれば、工事金額を理由に受注を断るリスクを減らせます。
元請会社や取引先からの信用につながる
建設業許可を取得するためには、経営体制、技術者、財産的基礎、社会保険などの要件を満たす必要があります。
そのため、一定の施工体制を整えた事業者として、元請会社や取引先から評価されやすくなります。
公共工事への参入を目指せる
公共の建築物、橋梁、道路などの塗装工事へ元請として参加するためには、原則として建設業許可が必要です。
さらに、経営事項審査を受け、希望する発注機関の入札参加資格を取得する必要があります。
建設業許可の取得は、公共工事へ参入するための第一歩になります。
大規模修繕工事に対応しやすくなる
集合住宅や事業所の大規模修繕では、塗装、防水、シーリングなどを含めて工事金額が大きくなる傾向があります。
将来、大型案件を受注したい場合は、塗装工事業だけでなく、防水工事業などの追加取得も検討するとよいでしょう。
塗装工事業の許可取得で確認される主な要件
一般建設業許可を取得するためには、主に次の要件を満たす必要があります。
- 建設業の経営について適切な管理体制があること
- 営業所ごとに一定の資格や実務経験を持つ営業所技術者等がいること
- 請負契約について誠実性があること
- 500万円以上の資金調達能力など、財産的基礎があること
- 欠格要件に該当しないこと
- 適切に社会保険へ加入していること
塗装工事業や防水工事業では、施工管理技士、技能士などの資格や、一定期間の実務経験によって営業所技術者等の要件を満たせる可能性があります。
ただし、資格の種類や等級によっては、追加の実務経験が必要になることがあります。
資格証の名称だけで判断せず、資格の取得時期や実務経験の内容まで確認しましょう。
よくあるケース
ケース1 戸建住宅の外壁塗装だけを行っている
1件の請負代金が常に税込500万円未満であれば、塗装工事業の建設業許可が不要となる可能性があります。
ただし、今後マンションや工場などの大型工事を受注する予定がある場合は、早めに許可取得を検討しましょう。
ケース2 外壁塗装とシーリング工事を一緒に行う
外壁塗装は塗装工事、シーリング工事は防水工事に該当します。
工事全体の目的、各工事の金額、主たる工事と附帯工事の関係などから、必要な許可を判断します。
ケース3 屋根の塗り替えを行う
既存の屋根材へ塗料を塗る工事は、一般的に塗装工事に該当します。
一方、瓦、スレート、金属板などの屋根材を交換または設置する場合は、屋根工事に該当する可能性があります。
ケース4 マンションの屋上防水工事を受注する
アスファルト防水、塗膜防水、シート防水などによる屋上防水は、防水工事に該当します。
請負代金が税込500万円以上となる場合は、原則として防水工事業の許可が必要です。
ケース5 道路の区画線を施工する
道路上の区画線や路面標示を施工する工事は、一般的に塗装工事に該当します。
税込500万円以上の工事を請け負う場合は、原則として塗装工事業の許可が必要です。
ケース6 トンネルの防水工事を施工する
トンネル防水工事などの土木系防水工事は、原則として防水工事業ではなく、とび・土工・コンクリート工事業に該当します。
防水工事業の許可だけで判断しないよう注意が必要です。
工事を受注する前の確認事項
塗装工事や防水工事を受注するときは、少なくとも次の事項を確認しましょう。
- 請負代金は消費税込みで500万円以上か
- 注文者から支給される材料があるか
- 主な工事は塗装、防水、屋根工事のどれか
- シーリング工事や屋上防水が含まれているか
- 足場工事が附帯工事に該当するか
- 自社施工する工事と下請に出す工事はどれか
- 現在取得している建設業許可で対応できるか
- 将来、公共工事へ参加する予定があるか
必要な許可がないまま工事を契約すると、実際に施工していなくても建設業法上の問題になる可能性があります。
大型工事の相談があった場合は、契約前に許可の要否を確認することが大切です。
まとめ
塗装工事と防水工事は、建設業法上、別の許可業種です。
主なポイントは次のとおりです。
- 税込500万円以上の塗装工事には、原則として塗装工事業の許可が必要
- 税込500万円以上の防水工事には、原則として防水工事業の許可が必要
- 外壁塗装や屋根塗装は、一般的に塗装工事
- シーリング工事、塗膜防水、シート防水は防水工事
- 屋根材を設置または交換する工事は、屋根工事に該当する可能性がある
- トンネル防水などの土木系防水工事は、とび・土工・コンクリート工事
- 足場工事は、塗装工事等の附帯工事として扱える場合がある
- 建築一式工事業の許可だけで、すべての塗装・防水工事を請け負えるわけではない
「塗装工事と防水工事のどちらの許可が必要か分からない」
「外壁改修工事を一括受注しても問題がないか確認したい」
「現在の資格や実務経験で建設業許可を取得できるか知りたい」
このような場合は、見積書の提出や契約締結の前に専門家へ相談することをおすすめします。
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