経管が退職したらどうなる?

経管が退職したらどうなる?

建設業許可におけるリスクと正しい対応方法

はじめに

建設業許可を支える最重要人物、それが**経営業務管理責任者(経管)**です。
この経管が、

  • 退職した
  • 病気で長期離脱した
  • 役員から外れた
    といった状況になると、建設業許可そのものが危険な状態に陥ります。

香川県でも、経管の退職をきっかけに
「許可が取り消されそうになった」
「元請から取引停止を受けた」
というケースが実際に起きています。

この記事では、
✅ 経管が退職した場合のリスク
✅ 会社が取るべき正しい対応
✅ 実務上の注意点
を分かりやすく解説します。

1️⃣ 経管が退職すると「即アウト」になるのか?

結論から言うと、経管が退職した瞬間に、建設業許可の要件を欠く状態になります。

建設業許可は、

  • 経営業務管理責任者
  • 専任技術者
    が「常勤で在籍していること」が前提です。

そのため、経管が不在になった場合は、
許可の維持要件を満たしていない状態=“無資格状態”
となります。

ただし、「即時取消」ではなく、一定の是正期間が設けられるのが実務上の運用です。

2️⃣ 経管退職時に発生する主なリスク

❌ リスク①:許可の取消・営業停止

経管が欠けたまま是正されない場合、
建設業法第29条に基づき、

  • 許可の取消
  • 営業停止処分
    の対象となる可能性があります。

❌ リスク②:新規工事の受注ができなくなる

経管不在の状態は、
「建設業許可の要件を満たしていない会社」
とみなされるため、元請企業や金融機関から

  • 新規契約の停止
  • 与信の見直し
    が行われるケースがあります。

❌ リスク③:公共工事・入札資格の停止

経管が不在になると、
入札参加資格から外される可能性があります。
一度外れると、再登録までに時間がかかるため、経営への影響は非常に大きくなります。

3️⃣ 経管が退職したときに必ずやるべき手続き

経管が退職した場合、最優先で次の2点を行う必要があります。

✅ ① 経営業務管理責任者変更届の提出

経管が変更になった場合は、
変更後30日以内に「経営業務管理責任者変更届」を提出します。

ただし、
「後任の経管がまだ決まっていない状態」
であっても、退職の事実は必ず届出が必要です。

✅ ② 新たな経管の早急な選任

同時に、後任の経管をできるだけ早く選任しなければなりません。

新しい経管には、

  • 同一業種での経営経験5年以上
  • 常勤性
  • 誠実性
    が求められます。

4️⃣ 実務上の「猶予期間」

経管が退職した場合、
おおむね2〜3か月程度の是正期間が与えられるケースが多いです。

ただし、これは

  • すぐに後任を探しているか
  • 行政庁と誠実に連絡を取っているか
    によって大きく左右されます。

何の連絡もなく経管不在の状態を放置すると、
是正命令 → 許可取消と進むリスクが一気に高まります。

5️⃣ 「後任がすぐに見つからない」場合の現実的対応

経管の後任がすぐに見つからない場合、次の選択肢が考えられます。

対応策内容
代表者が経管になる代表が過去に5年以上の経営経験を有する場合
社内昇格管理職・親族などが経営補佐経験6年以上ある場合
事業承継型先代から後継者へ段階的承継
一時的な事業縮小許可が必要な工事を一時停止

外部から経管を「名義だけ借りる」行為は違法のリスクが極めて高いため、絶対におすすめできません。

6️⃣ 実際にあったトラブル事例

【事例】三豊市の建設会社での経管退職トラブル

  • 創業社長が突然引退
  • 後任が決まらないまま2か月放置
  • 土木事務所から是正指導
  • 急いで後任を立てたが、証明書類が不足して間に合わず

結果:
👉 一時的に許可の効力停止扱いとなり、元請との契約が白紙に。

このケースでは、事前に後継者育成をしていなかったことが最大の原因でした。

7️⃣ 経管退職リスクを防ぐための「事前対策」

今すぐできる対策は次の5つです。

  1. 経管が誰かを社内で明確に共有する
  2. 経管の年齢・健康状態を把握しておく
  3. 後継候補を1名以上、常に意識して育成する
  4. 経管の証明書類を定期的に整理・保存する
  5. 行政書士など専門家と継続的に連携する

「問題が起きてから相談」では、間に合わないケースも非常に多いのが実情です。

8️⃣ 専任技術者が退職した場合も同様に危険

なお、同じことは専任技術者が退職した場合にも当てはまります。

  • 経管=経営の要
  • 専任技術者=技術の要

このどちらが欠けても、建設業許可は維持できません。

まとめ

ポイント内容
経管が退職すると許可要件を欠く状態になる
放置すると是正命令 → 許可取消のリスク
必須手続き経管変更届(30日以内)
猶予期間概ね2〜3か月
最大の対策後継者の事前育成

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  • 行政書士 山岡正士